工事不要の手すりで変わる在宅介護|立ち上がり補助グリップが自立支援につながる理由

在宅介護では、「できることはできる限り自分でしてほしい」と思いながらも、「転倒したらどうしよう」「介助が大変」という不安がつきものです。

そんなとき、工事不要の手すり立ち上がり補助グリップといった道具が、本人の自立と介護者の負担軽減の両方を支えてくれる存在になります。

私自身、介護の現場で実際にその効果を目の当たりにした経験があります。


目次

自分で立ち上がれることが「自信」につながる

高齢になると、筋力の低下やバランス感覚の衰えにより、立ち上がる・歩くといった当たり前の動作に不安を感じるようになります。

しかし、安心してつかまれる手すりがあることで、「自分でやってみよう」という意欲が生まれます

「道具を使えば、自分でもできる」という成功体験が、本人の自信や行動意欲の向上につながるのです。


介助の回数が減ることで、家族の負担が軽くなる

立ち上がりや移動の介助は、頻度が高く、腰や背中への負担も大きい作業です。

しかし、適切な手すりを設置することで、「付き添い」だけで済む場面が増え、介護の手間と身体的負担が軽くなります。

日常の中で小さな「自立の時間」が増えることで、介護者自身の生活にも余裕が生まれるのです。


私の体験:手すりひとつで「できることが増えた」利用者様

デイサービスで働いていた頃、送迎で伺ったあるご利用者様のご自宅で、忘れられない光景に出会いました。

その方の部屋には、工事不要の置き型手すりが部屋の端から端まで設置されており、ベッドサイドには立ち上がり補助用の手すりもありました。

片麻痺のある方でしたが、それらの手すりを活用して、部屋の奥のテーブルから入り口近くのトイレ、途中のベッドへも、自分の力だけで移動していたのです。

そしてその方は、元エンジニアで非常に頭の良い方でした。

パソコンに向かい、ゲームの攻略法を考えたり、情報を整理したりと、ご自身の生活を心から楽しんでおられたのが印象的でした。

「この手すりがあるから、自分で好きなことができる」と語られていた言葉が心に残っています。

ご家族も「呼ばれる回数が減り、お互いに落ち着いて過ごせるようになった」と話してくださいました。

動けることは、“その人らしさ”を支える大きな力になると実感した出来事です。


手すりの種類と選び方

工事不要の手すり(福祉用具購入対象)

  • 据え置き型:床に置くだけで設置できる
  • 突っ張り型:床と天井で固定(壁に穴を開けない)
  • 吸盤型:浴室などに一時的に設置

→ 必要な場所にすぐ導入でき、賃貸でも安心して使えます。

工事が必要な手すり(住宅改修対象)

  • 壁や柱に直接固定し、より強固に支える
  • 玄関、浴室、廊下など、転倒リスクの高い場所で特に有効

→ 安定性が高く、安全性に優れますが、設置には工事と申請が必要です。


介護保険で手すりを設置・購入するには?

手すりを取り入れる方法は、主に「工事が不要なタイプ」と「住宅に工事を伴うタイプ」の2つがあります。

工事の有無によって使える制度が異なり、相談先や手続きの進め方にも違いがあります。

以下では、種類別に「どの制度が使えるのか」「どんな手続きが必要なのか」を分かりやすくまとめました。


工事の有無で異なる2つの制度


工事不要の手すり

福祉用具購入(年間上限10万円、自己負担1〜3割)。据え置き型・突っ張り型・吸盤型など、工事なしで導入できる。


工事が必要な手すり


住宅改修(生涯上限20万円、自己負担1〜3割)。壁や柱に固定する手すりで、安全性が高い。市区町村への事前申請が必要。


主な設置方法


据え置き型、突っ張り型、吸盤型(工事不要)/壁固定型(工事あり)

保険適用の条件


要支援1以上で、ケアマネジャーを通じて事前申請が必要


手続きに関わる人


ケアマネジャー、福祉用具業者、または工事業者+市区町村(住宅改修の場合)

※ 手すりを設置する際に介護保険を使う場合は、必ず事前にケアマネジャーや専門業者に相談してください

先に購入・設置した場合、補助の対象外となることがあります。


ネット通販でも購入できるけど注意が必要

Amazonや楽天などの通販サイトでは、介護用手すりも豊富に取り扱われています。

レビューや価格を参考に、自分で選んで購入する方も増えています。

ただし、ネットでの直接購入は介護保険の対象外となるため、全額自己負担になります

適切な手すりを選ぶには、専門家のアドバイスを受けるのが安心です


まとめ|“道具を使う”ことは、“できる”をあきらめないという選択

介護の道具は、単なる補助ではなく、本人の「やりたい」を叶えるための支えとなる存在です。

自分で立ち上がれる、移動できる、好きなことができる――それはその人の生活そのものを豊かにします。

そしてそれは同時に、介護する家族の負担や心配を減らし、お互いの関係性をより良いものにしてくれます

まずは「1か所だけ試してみる」ことからでも、きっと生活は変わります。


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