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病院での身体拘束がもたらした悲劇 ー 大切な家族を守るために知っておきたいこと

目次

はじめに

認知症の家族を介護する中で、私たちは病院での医療を信頼し、適切な判断がなされると考えていました。しかし、義母が入院したその日に身体拘束され、数時間後に亡くなった経験は、今でも私たちに深い後悔と疑問を残しています。この出来事を振り返り、家族として何ができたのか、今後同じ悲劇を繰り返さないために何を知っておくべきかを考えたいと思います。

入院当日 —— 突然の拘束の決定

義母は要介護3で、膝関節症のため車椅子を利用していましたが、トイレはほぼ自立していました。認知症があり短期記憶が極端に短いものの、病院嫌いではなく、医師や看護師の指示に従うタイプでした。

ある日、施設で食欲がなく、やや元気がないことから病院での検査を勧められ、施設提携の病院に入院することになりました。診察の結果、胸水が溜まっているものの、治療を受ければ数週間で退院できると聞き、家族としても安心していました。

しかし、その日の夕方、夫のもとに病院から突然の電話が入りました。

「検査を行うために、身体拘束の承諾をお願いします。」

私はその日仕事で不在だったため、夫が一人で対応することになりました。突然の要請に驚いた夫は、「身体拘束とは具体的にどういうことをするのですか?」と尋ねました。病院の回答は「ミトンを使用するだけでも拘束扱いになるため、承諾が必要です」というものでした。

夫は、認知症の義母が拘束されたらパニックになってしまうのではないかと不安を感じ、それを病院に伝えました。しかし、病院側からは「安全のため」という説明のみで、代替策についての提案はありませんでした。

夫は一人で判断することに強い不安を覚えながらも、病院の説明を受け入れるしかない状況でした。

拘束を承諾した後の悲劇

その後、夫は私が仕事から帰宅するとすぐにこの件について話しました。

「病院から拘束の承諾を求められたんだけど……これで良かったのかな?」

私はその話を聞き、「あの母を拘束するのか?」と強い疑問を抱きました。義母は病院嫌いではなく、むしろ医師の指示には従うタイプだったのに、なぜ拘束が必要なのか? 病院側が十分な説明をせずに、一方的に拘束を決定しようとしているのではないか? そんな疑念が頭をよぎりました。

そして、その矢先、病院から再び電話がかかってきました。

「予想しない事態が発生しました。息をしていません。亡くなりました。」

あまりにも突然の報告に、私たちは呆然とするしかありませんでした。入院当日、検査のための拘束を承諾してからわずか数時間で義母は命を落としたのです。

病院へ駆けつけた時、私たちはすでに冷たくなった義母と対面しました。何が起こったのか、なぜこんなに急変したのか、説明を求めても病院からは、納得できる回答は得られませんでした。

その後、私たちはさまざまな書類にサインを求められ、その中には拘束の同意書も含まれていました。義母はすでに亡くなっており、私たちは動揺と混乱の中で言われるがままにサインをしてしまいました。

夫の抱える後悔

それから3年以上が経過しましたが、夫はいまだに「俺が母を殺してしまった」という気持ちを抱えています。入院初日の患者が身体拘束され、パニックを起こしていたにも関わらず、適切な観察が行われなかったのではないか? 本当に拘束が必要な状況だったのか? ほかに方法はなかったのか? そう考えるたびに、深い後悔がこみ上げてきます。

「なぜ病院の言われるがままにしてしまったのか」「もっと質問し、他の選択肢を模索できなかったのか」と考え続けています。

拘束の3要件は満たされていたのか?

病院で身体拘束を行うためには、切迫性・非代替性・緊急性の3つの要件を満たす必要があります。

  • 切迫性: 本当にその場で拘束しなければならないほど危険だったのか?
  • 非代替性: 他に方法がなかったのか? 付き添いや見守りで対応できなかったのか?
  • 緊急性: 直ちに拘束しなければならないほどの理由があったのか?

私たちが当時得られた情報では、これらの要件が満たされていたかどうか、判断することはできませんでした。

これから家族ができること

この出来事を振り返り、同じような悲劇を防ぐために、家族ができることを考えました。

  1. 身体拘束について事前に学ぶ
  • 認知症患者に対する拘束のリスクを理解し、必要のない拘束を防ぐ。
  1. 病院に説明を求める
  • 拘束の目的、方法、解除の基準を明確に聞く。
  • 代替手段がないのかを確認する。
  1. 家族の意向を明確に伝える
  • 「できる限り拘束を避けたい」という意思を病院側に伝える。
  • 必要であればセカンドオピニオンを求める。
  1. 診療記録を確認する
  • もし家族が不信感を抱く場合、診療記録を開示請求し、拘束の判断が適切だったのかを確認する。

まとめ

義母の死は、病院の判断と家族の無力感の中で起こりました。私たちは今でも後悔と疑問を抱えていますが、この経験を共有することで、ほかの家族が同じ思いをしないよう願っています。

認知症患者に対する身体拘束は、慎重に検討されるべきものです。病院や医療関係者に任せるだけでなく、家族としても正しい知識を持ち、必要な時には毅然とした態度で意見を伝えることが大切です。

「このような悲劇を繰り返さないために」

私たちはこの経験を通じて、そう強く願っています。

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