「認知症の家族に、どう接していいかわからない…」
「突然、被害妄想のようなことを言われて、傷ついてしまった…」
そんな経験に心を痛めている方も多いのではないでしょうか。
私自身、家族で義母の被害妄想に悩み、何年もの間、義母との関係が途絶えてしまったことがあります。
家族みんなで何とか寄り添おうとしても、疑われ、責められ、どうしていいかわからず、距離を置くしかなかった時期がありました。
でも、認知症という病気について学び、経験を重ねる中で、相手の見ている世界を理解することの大切さを感じるようになりました。
今回は、そんな私たち家族の体験から、認知症による被害妄想とどう向き合えばよいか、一つのヒントになればと思い、この記事を書きました。
同じように悩んでいる方へ、少しでも心が軽くなるきっかけになりますように。
義母に現れた被害妄想のはじまり
義母が60代の頃から、思い返せば被害妄想のような症状が現れていました。
家族で夫の実家を訪ねるたびに、
「何かがなくなった」
「あなたたちが盗んだのではないか」
そんな言葉を投げかけられ、私たちは深く傷つきました。
小さな子供たちまで疑われ、責められ、何度も「どうしてこんなことに…」と悩みました。悲しく、苦しく、やがて義母とは疎遠になってしまったのです。
これは私だけでなく、夫も、子供たちも、私たち家族全体が傷つき、義母との関係を断たざるを得なかった結果でした。
義母と義兄の二人暮らし、そして再会
その後、義母は実家で義理の兄と二人で暮らしていました。
兄もまた、義母の言動に苦しみ、何度もぶつかり合っていたそうです。
義母はアルツハイマー型認知症と診断され、病院に通うようになりましたが、病気は進行していきました。
ある日、「お前のこともわからなくなる前に、一度会いに来たほうがいい」と兄から夫に連絡があり、再び義母と会うことになりました。
兄は再会の場として、みんなで温泉旅行を計画してくれました。久しぶりに家族で会うことへの不安と期待を胸に、私たちはホテルへ向かいました。
温泉旅行で再び現れた被害妄想
ホテルの大浴場での出来事は、今でも忘れられません。
私と娘たち、そして義母の4人でお風呂に入りました。最初は「気持ちいいね」とご機嫌だった義母。しかし、湯船の中で突然、表情が変わり、
「無理やりここに連れてこられた」
と叫び始めたのです。
私たちが誰かもわからなくなり、その言動を目の当たりにした娘たちはショックで泣き出してしまいました。私は、なんとかこの状況を落ち着かせたい一心で、義母の話す内容をじっと聞きました。
義母は、デイサービスに無理に連れて行かれたと怒っていたのです。私はその世界を否定せず、デイサービスの職員になりきって謝りました。
「ごめんなさい、無理に連れて行ってしまって…」
そうすると義母の興奮はおさまり、次第に穏やかな表情に戻っていきました。
被害妄想への対応で学んだこと
この経験から学んだのは、「否定しないこと」の大切さです。
認知症の人が見ている世界は、私たちとは違う現実です。
無理に正そうとせず、その世界に寄り添うことで、安心感を与えることができるのだと感じました。
もしあの時、「そんなことないよ」と否定していたら、義母はますます興奮してしまい、私たちも傷つく結果になっていたかもしれません。
同じように悩む方へ
認知症による被害妄想は、介護する家族にとって大きなストレスとなります。
疑われたり、責められたり、理不尽な言葉に心が折れそうになることもあるでしょう。
でも、どうか思い出してほしいのです。
その言葉は「病気」が言わせているということを。
そして、相手の世界を少しでも理解しようと寄り添うことで、心が通じ合う瞬間が訪れるかもしれません。
私もまだまだ未熟ですが、あの日の経験を通して、認知症の義母との接し方を少しだけ学ぶことができました。
この記事が、同じように悩むあなたの、心の支えになれば嬉しいです。
まとめ
義母の被害妄想との向き合い方を、私たち家族の体験をもとにお話ししました。
・被害妄想は、認知症の症状のひとつ
・否定せず、相手の世界に寄り添うことが大切
・家族も無理をせず、自分の心を守ることも忘れずに
認知症介護は一人で抱え込まず、誰かに相談しながら、少しずつ向き合っていきましょう。
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