夏休みがやっとやってきました。大学の期末テストを乗り越えて、心と身体を少し休められる時間です。振り返ってみると、今学期で一番印象に残った授業は「生成AI概論」でした。
とくに心に残ったのが、「バーチャリー・パーキンソン」というプロジェクトです。亡くなった著名なインタビュアーの声と話し方をAIで再現し、まるで本人がそこにいるかのようにゲストと会話する。その内容は、テクノロジーの進化と、それに伴う感情や倫理の問題について考えさせられるものでした。
AIで「声」を再現するということ
これまで、思い出は写真や映像、音声で残すものでした。でも、生成AIの登場で、「本人がもう一度語りかけてくる」ような新しい形の記録が可能になりました。
「バーチャリー・パーキンソン」では、インタビュアーであった故・サー・マイケル・パーキンソンの声をAIで再現し、そのスタイルや癖までも学習させたAIが、実際にゲストとインタビューを行います。
最初は驚きました。「それって…もう人間じゃなくてもいいってこと?」と。でも、これは“人間の代わり”ではなく、“新しい対話のかたち”として使われているのです。
息子が語った、父の「声」と再会した気持ち
このプロジェクトに協力したのは、マイケル・パーキンソン氏の息子、マイク・パーキンソンさんです。最初は戸惑いや葛藤もありました。父の声が、AIとして自律的に受け答えをする──それは、どこか「魂のない人形」と向き合うような怖さを感じさせたそうです。
でも、マイクさんは「公のパーソナリティ」と「父親としての姿」を心の中で切り分けて受け止めていきました。
私たちも、亡くなった人の声を聞いた時、「ああ、こんな話し方だったな」「こんな風に笑ってた」と思い出が一気によみがえることがありますよね。それがリアルなAIとして存在するなら、喜びと同時に、複雑な感情も生まれて当然です。
「本質」を残すということの重み
AI技術が進化すれば、声だけでなく、しぐさや表情までもリアルに再現されるようになるでしょう。けれども、どんなにリアルであっても、「その人らしさ」はどこまで再現できるのでしょうか?
声の高さ、話し方、言葉の選び方だけではなく、その人がなぜその言葉を使ったのか、どんな想いがあったのか──そこに宿る「本質」こそが、残すべきものかもしれません。
授業では、オードリー・ヘプバーンの息子ショーン・ヘプバーン・フェラー氏の言葉も紹介されました。彼は「母の魅力は、“完璧な不完全さ”にあった」と言います。だからこそ、ただ綺麗に整えられたAIの再現ではなく、“不完全な人間らしさ”をどう捉え、残していくかが大事なのだと。
大切な人を、どう残したいですか?
もしあなたの大切な人が、AIによって“再現”されるとしたら──その声を、もう一度聞いてみたいと思いますか?
それができる時代がすぐそこまで来ています。けれど、だからこそ「何を残すか」「どう残すか」には、深い想いと責任が伴います。
それは、ただの技術ではなく、想い出や絆をどう未来へつなげるかという「文化の選択」でもあるのです。
さいごに:未来の記憶に心を添える
AIは、過去を再現するだけでなく、「過去と対話する」手段にもなります。でもそれは、人の想いがあってこそ意味を持ちます。
この夏、少し時間があるからこそ、自分にとって「残したい声」は何か、静かに考えてみてもいいかもしれません。
あなたが誰かの「記憶」に残るように、あなたも誰かの「声」を、大切に胸に残せますように。
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