介護の現場で誤薬をしてしまった私が学んだこと:失敗から考える安心の工夫

介護の仕事では「絶対にしてはいけない」と思っていることがあります。その一つが服薬ミスです。私は先日、夜勤明けの朝に誤薬をしてしまいました。大きな影響はなかったとはいえ、決して許されることではありません。自分を責める気持ちは今も消えませんが、この体験を隠すよりも「同じように介護を担う方の安心や工夫につながれば」と思い、書き残すことにしました。


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忘れられない誤薬の瞬間

職場で特別なイベントがあり、残業や夜勤が続き、休憩も取れない日々が続いていました。疲れている自覚はありましたが、「自分は絶対に間違えない」と思っていたのです。

夜勤明けの朝、あと少しで業務が終わるという時。毎朝一錠の薬を飲んでいる利用者さんに、同じ名字の方の薬(10錠ほど)を渡してしまいました。

「もしかして間違えたかもしれない」と気づいた瞬間、頭が真っ白に。目の前の人が誰なのか一瞬わからなくなるほどの混乱に陥りました。すぐに報告し、同僚や医療スタッフが対応してくれたおかげで、大きな問題には至りませんでした。

それでも、「絶対にしない」と思っていたことを自分がしてしまった――この事実は、深く心に残りました。


誰にでも起こり得る、でも二度と繰り返してはいけない

介護の現場では、疲労や慣れによる思い込みからヒューマンエラーが起こり得ます。

  • 疲労と眠気:夜勤や残業で判断力が鈍る
  • 慣れによる油断:「いつもこの人はこうだから」と確認を省いてしまう
  • 同じ名字や似た条件:思い込みと重なると誤認のリスクが高まる

今回の出来事で「自分は絶対に大丈夫」という思い込みこそ危険だと痛感しました。大丈夫だと思っていても、人は弱さや限界を持つ。だからこそ、「仕組み」や「習慣」で支えていかなければならないのだと学びました。


間違いを防ぐために大切な工夫

「自分は大丈夫」と思っていても、人は誰でも注意が抜けてしまうことがあります。だからこそ、安心につながる工夫を取り入れることが大切です。

  • 必ず声に出して確認する 薬の名前や錠数を声に出す。家庭でも「今日は〇〇の薬を1錠」と独り言のように言うことで注意力が高まります。
  • 深呼吸してから始める 焦っているときこそ、数秒だけでも呼吸を整えてから作業に入る。小さな余裕が大きな事故を防ぎます。
  • 仕組みに頼る 服薬カレンダーや1回分ごとの分包など、人の注意力だけに頼らない工夫を使う。
  • 一人で抱え込まない 失敗や不安は誰かに話す。責められることを恐れるより、共有することで安心につながります。

ご家族の言葉に救われて

誤薬の件は、ご家族に謝罪と説明をしました。すると「本当に大変なのはわかりますから、大丈夫です。あまり気にしないでください」と温かい言葉をいただきました。

もちろん「気にしないで」と言われても、反省の思いは消えません。しかし、人の優しさに救われることもまた事実です。この言葉があったからこそ、私は立ち直る勇気を持てました。


介護をするあなたへ伝えたいこと

介護をしていると「絶対に間違ってはいけない」という緊張感に押しつぶされそうになることがあります。もちろん、命や健康に関わることですから、軽く考えてはいけません。

けれど同時に、人は誰しも弱さや限界を持っています。大切なのは「ミスをしない人間になる」ことではなく、「弱さを認め、それを支える工夫を続ける」ことではないでしょうか。

今日からできる一歩は、薬や重要な作業をするときに **「深呼吸して心を整える」**ことです。たったそれだけでも、焦りや不安に飲み込まれにくくなります。

介護を担うあなたが、自分を責めすぎず、安心して続けていけることを心から願っています。


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