家族の介護では、立ち上がりや移動、排泄など、体を支える場面があります。つい自分の力で何とかしようとしてしまうこともあるかもしれません。
けれど、介助する人にも、介助される人にも、できるだけ負担の少ない方法があります。今回は「持ち上げない介助」という視点から考えてみたいと思います。
家族だからこそ、つい自分の力で支えようとしてしまう
家族が立ち上がろうとしているとき、ふらついたとき、ベッドから車椅子へ移るとき。
そばにいれば、自然と手を伸ばすのではないでしょうか。
家族の介護では、「介助をする」というより、「ちょっと手伝う」「少し支える」という感覚から始まることも多いと思います。
けれど、それが一日に何度も繰り返されたり、介護する期間が長くなったりすると、少しずつ体への負担が重なっていくことがあります。
私も介護の仕事をしてきた中で、移乗や排泄の介助など、人の体を支える場面をたくさん経験してきました。
その中で感じてきたのは、介助する人の力だけに頼らないことの大切さです。
介助される人にも、その人自身ができる動きや残っている力があります。
その力を生かしながら、必要なところを支えたり、福祉用具を使ったりする。
そんな介助のほうが、お互いの体への負担を少なくできることがあります。
「持ち上げない介助」は、どちらの体にもやさしい
人の体を抱えて動かそうとすると、介助する側の腰や腕には大きな負担がかかります。
一方で、介助される側にとっても、体を抱えられて持ち上げられることが、必ずしも安心できる方法とは限りません。
自分で動ける部分まで介助されてしまえば、持っている力を使う機会が少なくなってしまうこともあります。
だからこそ、介護の場面では「どう持ち上げるか」ではなく、**「できるだけ持ち上げずに介助するにはどうしたらよいだろう」**と考えることが大切になってきています。
介助する人の体を守りながら、介助される人自身の動きも大切にする。
「持ち上げない介助」は、どちらか一方のためではなく、両方にとってやさしい介助につながるのだと思います。
自分の体にかかる負担を知っておく
持ち上げない介助を意識していても、日常生活の中では、物を持ったり運んだりと、重さのあるものを扱う場面があります。
「自分の体格では、どのくらいの重量が負担になりやすいのだろう」
そんなことを知る一つのきっかけとして、下の計算ツールで目安を確認することができます。
厚生労働省が示している重量物を取り扱う際の考え方をもとにしたものですが、人を介助するときに「ここまでなら持ち上げてもよい」と判断するためのものではありません。
人の介助では、姿勢や動き、本人の状態、周囲の環境など、さまざまなことが関係します。
あくまでも、自分の体にかかる負担について考えるための一つの目安としてご覧ください。
性別と体重を入力すると、重量物を人力で扱う際の目安を確認できます。
介助する人の体への負担を考えるための参考としてご利用ください。
※人を抱え上げてもよい重量を示すものではありません。
「持ち上げない」を助けてくれる道具がある
介護する人が力だけに頼らなくてもすむように、助けてくれる道具があります。
たとえば、ベッドと車椅子などの間を移るときに使うスライディングボードもその一つです。
本人の動ける力を生かしながら、滑るように移動することで、介助する人が抱えて動かす必要を減らすことができます。
また、ポータブルトイレも、夜間などにトイレまで移動することが大きな負担になっている場合には、選択肢の一つになることがあります。
福祉用具というと、「できなくなったから使うもの」という印象を持つこともあるかもしれません。
でも、介助される人の力を生かしながら、介助する人の負担も減らしていくための道具と考えることもできます。
道具に助けてもらうことも、介護の一つの方法です。
介助する人も、される人も、両方の体を大切に
家族の介護では、どうしても介助される人の安全を先に考えます。
それは自然なことだと思います。
けれど、そのそばで支えている人の体も、同じように大切です。
そして、介助する側の負担を減らすことが、介助される側にとっても負担の少ない方法につながることがあります。
「自分が頑張って支えればいい」と考えるのではなく、
「もっとお互いに楽な方法はないだろうか」
と考えてみる。
福祉用具を使うことも、誰かに相談することも、そのための選択肢の一つです。
介助する人と、介助される人。
どちらかが無理をするのではなく、両方の体を大切にできる方法を探していけたら、それが長く続く介護にもつながっていくのではないでしょうか。
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